今回のテーマは、「キャラを読者の中に定着させること」です。そのために解説されていたのが、2008年第2号に掲載の『D.Gray-man』講座。
「説得力のある設定を作る」ことがテーマとされていますが、これは言い換えれば「キャラを読者に定着させること」に相当します。なぜなら、説得力のある設定とはつまり、読者の中にスッと落とし込まれるものであり、そこでの納得感が醸成されずに違和感が残れば、そのキャラに対する違和感として読者はそのキャラを受け入れなくなるからです。そのために、そのキャラにまつわる設定をわかりやすく、合理的に描く必要が出てきます。それが、今回講座で説明されている「説得力」なんですね。
ここで言う説得力とは、単なる理屈だけではありません。理性的にも感情的にも、読者が納得し、受け入れられることです。すなわち、「そのキャラはなぜそう感じたのか」「なぜそんな風に行動したのか」「なぜ状況が変わったのか」ということについて、理性的にも感情的にも納得いくように描くこと。
特殊能力に目覚めたり、暗い経緯を持ってたりするなんてのは端から見るとおかしなところもあったりするものですが、それをおかしいと読者に感じさせないこと。もっと言うなら、読者を「主観的」にさせてしまうこと。「そんなこと普通に考えたらおかしいだろ」ということを、「けどわからんでもないな」と感じさせることが、ここでいう「説得力」なんですね。
この主観的にさせることを別の言葉で言うと、「感情移入させる」ことになるわけです。つまり説得力ある設定とは、そのキャラに対して読者の感情移入を誘うものでなくてはいけないのです。
その説明として、ミランダのエピソードが解説されました。眼目は、「なぜミランダは「タイムレコード」を使えるようになったのか」ということ。初めから特殊アイテムを使用できるキャラとして登場させるのではなく、力を得るきっかけや過程を描くことでそのキャラの戦い方や考え方を表現するものですね。
文字が読みにくいので大きめな画像も載せていきます。
疑問1「ミランダってどういう人?」
モテない、暗い、鈍くさいと後ろ向きな思考を持つ女性。ところがある日、町の時間が一日丸ごと巻き戻るという不思議な現象に遭遇。そこには、ミランダが大切にしている古時計が関係しているようで……。まずはミランだの、物事に後ろ向きな性格をエピソードとともに読者に印象付ける。
疑問2「なぜ時計なの?」
古道具屋で壊れた時計と出会ったミランダは、役立たずな自分と重ね合わせて共感を覚える。すると今まで誰も動かせなかった時計が動き出したのだ!!彼女の性格を描くことで時計への愛着を伝えている。さらに後ろ向き+時計という組み合わせが事件の核心に……!!
疑問3「どうして発動したの?」
後ろ向きなミランダの「明日なんて来なければいい」という言葉に反応して時計は時間を巻き戻していた!!つまり彼女が前向きな気持ちを持てば事件は解決する!!傷つきながらも闘うアレンたちを見て強く願った「守りたい」という前向きな気持ちが、時計の形をした彼女のイノセンスを発動させ時間を動かしたのだ!!
だからこそ、ミランダは時計のイノセンスを使える!!
今回見たように、読者の「なぜ?どうして?」に答えるためには、その根拠となるエピソードを重ねていくのが効果的だ。言葉だの説明に終わるのではなく、あくまでエピソードとして根拠を示すこと。これさえできれば、君の作品の説得力も大幅にアップすること間違いなしだぞっ!!
文字が読みにくいということで、画像とともに中の文章も書き起こしてみました。
ここで説得力をもたせようとされている設定は、「ミランダが時計のイノセンスの適合者であったこと」ですね。 論理的に考えるならば、ミランダが適合者であったことは単なる作者の都合や設定の加減によるものです。しかし「これだけの流れを踏まえれば、そんな野暮なこと言わないよね」のを描いていくのが、説得力ある描写なんですね。
最初から能力者やアイテム使いとして登場してくるキャラよりも、その力を得る過程が描かれたキャラのほうが印象に残るのは当然のことです。その能力が重大であればあるほど、それによって醸成された印象は、後に演出に利用できたりもするでしょう。
それでなくとも、「なぜそんなことになっているのか」を説明できるエピソードや根拠を描くことは、そのキャラが確かに「生きている」ことを読者に感じさせるために必要不可欠なことであるでしょう。
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