設定を言葉だけで説明するからわかりにくくなる

原作的な方

今回の話は、特に新人さんのうちにやりがちな失敗ではないかと思います。

いろいろと凝った設定と世界観を考えたために、作中での説明がやたら複雑なことになってしまって、結局よく分からなくなってしまうというあの現象。本気で作品を1つ作り上げようと意気込めば意気込むほど、空回ってよけいわかりにくくなっていくあの感覚は、おそらくどの新人さんも悩んでいるところであるでしょう。

そんな悩みを解決する1つのヒントになりそうなコツがこれ。
2009年第27号に掲載の講座です。

200927設定を形にする 

設定をカタチにすること。

岩代俊明先生の『PSYREN』において設定と世界観のキモとなっているのは、「電話を通して現代と荒廃した未来世界を行き来すること」と、「その移動を意図的に引き起こしている何者かがいること」でした。

言葉や光景のみで説明しようとすれば、どうしても台詞が増えてテンポも悪くなり緊迫感も薄くなります。それを解決したのがテレホンカードとネメシスQだったわけです。

現代と未来を行き来することになった者が持つキーアイテムとしてのテレホンカード。画像の講座では、このテレカを「設定を理解するための入り口」として説明していますが、もう少しわかりやすく言い換えると「象徴」ということになるでしょうね。

このテレカを持っている奴は、現代と未来を往復している。その不思議現象に囚われている者を象徴するためのアイテムなのです。たとえば新キャラを登場させて、そいつがテレカを持っていたら。あるいは主人公たちの誰かがテレカを奪われたり失くしたりしたら。

未来世界との往復という不思議現象を「カタチ」として象徴するアイテムを置いてやることで、そんな話の広がりを持たせることができるんですね。これがもしテレカがなければ、主人公たちの状況を作中で誰に説明するにも面倒な作劇が必要になることでしょう。テレカがあるから、マツリ先生が「経験者」であることが一瞬で証明できたわけですね。

ネメシスQも同様です。未来世界との往復を強制している奴がいること。そして秘密結社の噂。明らかに胡散臭い存在を、ただ噂や伝聞などで説明するのではなく、実際に主人公たちの前に現れる怪人として描く。それによって、主人公たちも読者も、確かに何やら得体の知れない奴がこの状況に関係していることを察することができるわけです。

未知の世界に飛ばされてしまったことに衝撃を受けたり、「謎の組織があるらしい」とか「殺された人もいるらしい」とかの噂を説明するだけでは「何となく」で終わってしまうんですね。そこに正体不明の怪人が登場することで、今の状況が偶発的に引き起こされたのではなく「何者かによって巻き込まれた」ものであることがはっきりし、そこに何らかの企みが想定されるという緊張感を生み出すことができるわけです。

ここで怪人が登場しなければ、超常現象が偶然発生した可能性も残されることになり、主人公たちには多少の緊張感とともに「未知の世界に来た」という好奇心も存在しておかしくないでしょう。もちろんそういう作品にしたいということもあるでしょうが…。

設定を「象徴」するアイテムを置いてやること。

特に複雑な設定となりやすいファンタジー作品なんかでは、有効な方法であるでしょう。

説明の手間を省くためのアイテム。あとは、具体的にどんなモノにするか、が問題となるだけですね。そこはもう作者本人のセンスに掛かっているでしょう。

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